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AAO-HNSガイドライン:良性発作性頭位めまい症

外来でよくBPPVは見ますね。
今月AAO-HNSのBPPV guidelineが更新されました。
今回はその紹介をしたいと思います。

Clinical Practice Guideline : Benign Paroxysmal Positional Vertigo
Otolaryngol Head Neck Surg.2017 Mar;156(3_suppl):S1-S47.

1a.後半規管BPPVの診断
 患側を下にしたDix-Hallpike(患側の耳が下になるように45度回旋+20度頸部進展をして頭位変換)で、回旋時のめまいと加速性の眼振が見られ、反対側で陰性の場合に診断してもよい。(strong recommendation)

 ・後半規管BPPVのCriteriaに合致する症状
  病歴 重力方向の頭位変換に伴うめまい症状の反復
  診察所見:Dix-Hallpikeで以下の3つを満たす場合に診断
   回旋性かつ加速性の眼振、症状と眼振に潜時(5〜20秒、まれに1分)があること、誘発されためまいと眼振が眼振出現後60秒以内に改善

 ごくまれに前半規管BPPVを合併している場合がある。(BPPV全体のうち、前半規管は1〜3%)


1b.外側半規管BPPVの診断
 BPPVに合致する病歴があり、Dix-HallPikeで眼振が見られない、または水平性眼振が見られた場合に頭位回旋を行う(Supine roll test)(Recommendation)

 主に2つの方法で、後半規管BPPVと鑑別。
  Supine roll testで水平性眼振、またはSupine head rollでめまいと眼振が誘発される。
 BPPVに合致する病歴を持つ時にDix-hallpikeで後半規管BPPVの所見がない場合に考慮する。
 眼振から2種類のタイプに分類される。
  Geotropic type(重力方向向き=床向き=下向き)半規管結石症:主にこのタイプ、患側に向いた時に加速性の下向性眼振が見られる。健側の場合は患側より弱い眼振になる。方向交代性眼振
  Apogeotropic type(重力と反対方向向き=天井向き=上向き)クプラ結石症:方向交代性で加速性の上向性眼振


2a.鑑別診断
 鑑別診断を行う、または他の鑑別ができる医療者に紹介する。(recommendation)
 安易にBPPVと診断されている例が多い。鑑別診断は多様である。

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2b.修飾因子
 BPPVに伴って、動作、バランス、中枢神経障害、家族サポートの欠如、転落・転倒のリスクの因子を考える。(Recommendation)

 BPPVは年齢で頻度は増えることが報告されている。他の報告では、糖尿病、不安、頭部外傷後に頻度が増え、偏頭痛や脳梗塞、高血圧、骨粗しょう症との関連が一部の文献で報告されている。外傷や転倒による骨折のリスクが上がるので注意


3a.放射線検査
 BPPVの診断基準に合致して、追加の所見がなければ追加の画像検査は推奨しない。(recommendation,against)

 通常のBPPVの診断基準を満たしていれば画像検査は不要。通常の経過や症状と異なる場合には検査を考慮する。


3b.平衡機能検査
 BPPVの診断基準に合致して、追加の所見がなければ追加の平衡機能検査は推奨しない。(recommendation,against)

 通常のBPPVの診断基準を満たしていれば平衡機能検査は不要。しかし、他の神経病変を基礎に持っていることがあるので、非典型的であったり異なる所見がある場合、頭位治療で改善が乏しい場合、頻回に再発する場合には検査を考慮する。


4a.半規管変換治療(以下CRP)
 後半規管BPPVであれば、CRPを行うことを推奨する(Strong Recommendation)

 後半規管BPPVであれば、EpleyまたはSemontを推奨。効果はcohort studyでも効果は良いことがわかっている。
 外側半規管BPPVの場合には患側決定が困難だがGufoni法がある。しかし外側半規管は突然症状が良くなり始めることがある。


4b.治療後の行動制限
 後半規管BPPVの体位変換治療後の体位・行動制限は推奨しない(Strong recommendation , against)

 RCTは少ないが、CRP後の安静などの行動制限と、それを行わなかった場合の比較では明らかな効果の差を認めなかった。行動制限を推奨するエビデンスは少ない。しかし、他のめまいが合併している場合はstudyから除外されているため留意が必要である。


4c.初期治療としての観察
 BPPVの初期治療としての経過観察を考慮してもよい(Option)

 経過観察を行う場合には転倒と転落のリスクが上がること、再発率が高くなることに留意するべきである。CPRの副作用(合併症)は頻度は少ない。しかし、16〜32%に手技中の吐き気があること、頸部の病変があり危険性がある場合には、経過観察が許容される。その場合には十分に説明を行うべきである。

5.平衡機能リハビリテーション
 BPPVの治療で、自己または医療者によるめまいリハビリを推奨する。(Option)

 CRPより効果は乏しいので治療のオプションとして考えるべきである。CRPが行えない場合などに考慮する。


6.薬物治療
 BPPVの治療で、抗ヒスタミン薬やベンゾジアゼピンなどの平衡機能症状を抑制する薬物の使用をルーチンに行うことを推奨しない(Recommendation against)

 抗ヒスタミン、抗コリン薬、ベンゾジアゼピン系の薬剤が鎮暈薬として使用されているが、薬の副作用による傾眠やふらつきなどでも転倒のリスクが上がる。特にベンゾジアゼンピンではplaceboと比較して差がないという二重盲検試験がある。吐き気などの症状が強い場合、CPR中の制吐予防のために、短期的に制吐剤などは投与してもよい。


7a.アウトカムアセスメント
 1ヶ月の時点で、治療の経過(経過観察、薬剤、症状の遷延)を確認し再度アセスメントを行う。(recommendation)
7b.治療不良時の再評価
 改善しないBPPVでは、末梢神経障害・中枢神経障害の評価を行い、必要があれば紹介する。(Recommendation)

 CRPが最もBPPVの治療で効果的であるが、失敗した場合には再アセスメントを行うべきである。治療後の適切な経過観察期間については決まっておらず、今後のstudyを待ちたい。
 また、初回治療後(CRPであれば2、3回)にめまい、ふらつき、立位困難が継続していれば治療失敗と捉えて、再アセスメントと精査を行うべきである。真に再発を繰り返す場合には手術なども手段となる。


8.教育
 BPPVの症状がある際の安全について教育を行う。また、再発やフォローアップの必要性について説明を行う。

 症状の経過、CPRの効果、非典型的な症状、中枢神経疾患が潜在する可能性があることを説明するべきである。
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BPPVのガイドラインで、しっかりデータがまとまっています。
また、NEJM(N Engl J Med.2014 Mar 20;370(12):1138-47.)にBPPVのまとめがあります。
めまい平衡医学会のHPに日本のガイドラインがありますので、比較してみるのもよいでしょう。


by hameyama | 2017-03-15 15:08 | 耳科
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